システム開発とは?種類・工程・依頼方法の基礎知識

システム開発とは何かを、実現方式、工程、外部委託の準備、費用・見積もり比較の観点から解説。発注前に整理したい課題、体制、依頼条件とリスク確認の基礎が分かります。

執筆 PartnerBase Mag 編集部約7分

業務の手作業を減らしたい、新しい顧客向けサービスを提供したい、既存システムの情報をつなげたい。このような課題に対し、必ずしも最初から個別開発を選ぶ必要はありません。既製サービスの活用、設定や連携、カスタマイズ、個別開発を比べながら、自社に合う進め方を見極めることが重要です。

この記事では、システム開発の定義から方式、工程、相談準備、見積もり比較、リスク確認までを発注者の視点で整理します。方式候補を仮置きし、相談用メモ・社内役割・共通依頼条件を準備できるようになります。

システム開発を、課題整理、方式選定、要件・体制整理、見積もり比較、導入・改善の流れで示した全体図。
システム開発を、課題整理、方式選定、要件・体制整理、見積もり比較、導入・改善の流れで示した全体図。

システム開発は実装だけで完結せず、課題整理から方式選定、発注準備、導入後の運用改善までを一連の取り組みとして捉えます。

01Sectionシステム開発とは、課題を実現する仕組みを整え続けること

システム開発とは、業務や事業の目的を実現するために、仕組みを構想し、要件を整理して、設計・実装・テスト・導入・運用改善を行う取り組みです。「プログラムを作ること」だけではなく、導入後に使い続け、改善していくことまで含めて考えます。

対象には、社内の業務システム、顧客向けWebサービス、スマホアプリ、取引先との連携機能、データ連携・活用基盤などがあります。要件定義では、利用部門が業務・事業上の目的を踏まえて主体的に関与することが重要とされています。IPAの要件定義ガイドも、業務側と開発側の認識をそろえる重要性を示しています。

開発が必要かは、機能数ではなく課題で判断する

まずは「何を作るか」よりも、「誰のどの業務・事業課題を、どう改善したいか」を確認します。標準機能や業務手順の見直しで目的を達成できるなら、既製サービスの活用が有力です。一方、固有の業務処理や継続的なデータ連携が必要な場合は、設定・連携、カスタマイズ、個別開発も候補になります。開発要否の判断基準はシステム開発が本当に必要かを見極める考え方で詳しく整理しています。

開発要否を考える4つの質問

  • ✓

    標準機能と業務手順の変更で、目的をおおむね達成できるか

  • ✓

    利用者ごとの権限、申請・承認、取引、履歴管理など固有の処理が必要か

  • ✓

    既存システムや取引先と、継続的・自動的なデータ連携が必要か

  • ✓

    その仕組みが顧客体験や自社の競争力に直接関わるか

Webサイト制作との違い

情報提供や集客が主目的であれば、Webサイト制作が中心になりやすいでしょう。一方で、ログイン後の権限管理、予約・決済、申請・承認、データ管理、外部サービスとの継続的な連携が中心なら、システム開発を併せて検討する必要があります。サイト制作とシステム開発が同じ案件に含まれることもあります。

02Section種類は「用途・利用者」「利用チャネル」「実現方式」の3軸で整理する

システム検討を、用途・利用者、利用チャネル、実現方式の3軸に分けて整理する図。
システム検討を、用途・利用者、利用チャネル、実現方式の3軸に分けて整理する図。

「誰が何のために使うか」「どの経路で使うか」「どう実現するか」を分けて考えると、方式候補を比較しやすくなります。

システムの種類を考えるときは、分類軸を分けると検討しやすくなります。「社内向け」は誰が何のために使うかという用途・利用者の軸であり、「Web/スマホ」は利用チャネルの軸です。既製サービスや個別開発は、実現方式の軸として扱います。

用途・利用者には、社内業務、経営・基幹業務、顧客向け、取引先連携、データ連携・分析などがあります。利用チャネルには、Webブラウザ、スマホアプリ、現場端末、API経由などがあります。これらを整理したうえで、実現方式を比較します。

実現方式は4つの候補で仮置きする

判断軸既製サービスパッケージ+設定/カスタマイズローコード/ノーコード個別開発
標準機能への適合度高いほど有力一部の不足なら候補定型業務なら候補標準機能で不足する場合に候補
業務・顧客体験の独自性低〜中程度に向く部分的な独自性を確認限定的な独自性に対応高い独自性が必要な場合に有力
既存連携の複雑さ接続可否を確認製品側の制約を確認連携・性能の制約を確認複雑な連携も要件として設計
変更頻度設定範囲内で対応更新時の影響を確認内製で変更できる体制が必要継続保守と変更判断が必要
セキュリティ・運用要件提供条件と責任分界を確認管理・保守の分担を確認権限・監査・統制を確認要件定義と保守設計で具体化
内製運用の可否利用・設定担当を確保製品管理者を確保設計・変更・統制担当を確保要件確認・受け入れ・運用担当を確保

表は、方式を一つに決めるためではなく、有力な候補と追加確認が必要な条件を見つけるために使います。機能だけでなく、性能、可用性、運用・保守、移行性、セキュリティといった非機能要件も確認してください。IPAの非機能要求グレードは、こうした確認観点の参考になります。

方式ごとの比較を深めたい場合は、システム開発の種類も参照してください。

03Section発注者は工程ごとに判断・レビュー・受け入れを担う

システム開発の各工程と、発注者が担う目的判断、要件確認、レビュー、受け入れ、改善判断を対応させた図。
システム開発の各工程と、発注者が担う目的判断、要件確認、レビュー、受け入れ、改善判断を対応させた図。

外部へ委託する場合も、発注者は工程ごとに目的・優先順位・業務上の妥当性を確認し、受け入れや改善の判断を行います。

外部へ委託しても、目的、業務ルール、優先順位、レビュー、受け入れ判断、運用改善の優先順位まで委託先だけに任せることは難しいものです。発注者側で、誰が何を確認するかを早めに仮決めします。

工程ごとに確認・承認すること

工程発注者の確認・承認主な社内役割
企画・構想目的、対象範囲、優先課題、投資判断業務責任者、決裁者
要件定義業務ルール、優先順位、例外処理、対象内外、受け入れ条件業務責任者、現場代表、情報システム・セキュリティ確認者
設計画面、権限、データ、連携、移行方針の業務上の妥当性現場代表、情報システム担当
実装・テスト進捗、課題、変更による範囲・費用・納期への影響業務責任者、変更判断者
受け入れ業務シナリオと例外ケースで完了できるか受け入れテスト担当、現場代表
リリース・運用リリース可否、教育、保守範囲、改善優先順位、成果指標業務責任者、運用担当、情報システム担当

ウォーターフォール型とアジャイル型の違い

比較項目ウォーターフォール型アジャイル型
作業の区切り方要件定義・設計・実装・テストなど、工程の節目で成果物を確認する優先度の高い機能を短い反復単位で作成・確認する
発注者のレビュー工程完了時に成果物を確認し、承認する反復ごとに成果を見て、次の優先順位を判断する
変更時の扱い範囲・費用・納期・品質への影響を確認して変更を判断する次の反復以降の優先順位や実装内容を調整し、必要に応じて全体計画も見直す
事前に決めること対象範囲、受け入れ条件、連携・移行条件、変更手順優先順位の決定者、レビューの場、変更の扱い、予算・契約上の確認方法

アジャイル型は、無計画に変更する進め方ではありません。短い単位で成果を確認し、その結果を次の開発内容へ反映する方法です。デジタル庁サイト掲載の『アジャイル開発実践ガイドブック』(内閣官房IT総合戦略室、2021年)も、漸次的・反復的に進める考え方を解説しています。

どちらが常に適しているとはいえません。要件の確度、変更頻度、発注者がレビューできる体制で選びます。全体方針や移行計画を先に整理し、一部の機能を反復的に開発する組み合わせも考えられます。工程や手法の詳細は、システム開発の流れで確認できます。

公的資料の扱い

デジタル庁の資料には政府情報システムや公共調達の文脈が含まれます。民間企業では一律の義務として扱うのではなく、要件整理、レビュー、委託管理を考える際の一般的な確認観点として参照してください。

04Section外部相談の前に、目的・制約・判断体制を1枚にまとめる

初回相談の時点で、完成した仕様書は必須ではありません。要求と主要な要件を共有し、方式や優先順位を相談しながら具体化します。

要求は達成したい業務・事業上の目的、要件は目的を実現するための条件、仕様は画面項目や処理手順など実装内容の具体化です。初回相談では、要求、主要要件、制約、判断体制を整理できていれば検討を始められます。

相談用1枚メモに入れる項目

背景・目的と対象業務

取り組む理由、改善したい状態、業務の流れ、対象部門、主な例外処理を整理する。

課題と優先機能

二重入力、待ち時間、ミス、属人化などの課題と、必須・後続に分けた機能の優先順位を整理する。

利用者・既存環境・制約

利用者数、同時利用、端末、繁忙時間帯、現行システム、データ、認証・連携先、セキュリティや社内規程を記載する。

希望時期と予算の考え方

開始希望時期と理由、予算上限の有無、投資判断時期、期限・機能・総額の優先順位、段階導入の可否を整理する。

成果指標・社内体制・未確定事項

効果の判断基準と測定方法、決裁者や受け入れ担当を仮置きする。未確定事項には決定者と決定予定時期を添える。

予算が未確定でも、上限の有無、投資判断の時期、優先順位を共有すれば概算相談は可能です。未確定事項は、理由と決定予定を伝えることで認識違いを減らせます。

05Section費用と期間は、見積もりの前提と総コストで確認する

費用とリリース時期は、対象業務・機能範囲、既存システムとの連携、データ移行、利用規模、性能、セキュリティ、テスト、教育、保守、発注者側の確認体制によって変わります。費用の内訳や相場の考え方はシステム開発の費用に委ねますので、あわせて参照してください。開発側の作業期間だけでなく、データ準備、レビュー、受け入れテスト、教育、移行判定に必要な発注者側の期間も確認しましょう。

初期費用では、要件整理、設計、実装、テスト、移行、導入支援などの対象内外を確認します。継続費用では、クラウド・外部サービスの利用、保守・監視、障害対応、セキュリティ対応、追加改修、教育、契約更新を分けて確認します。経済産業省の情報システム・モデル取引・契約書でも、構築・設定、移行、教育、保守・運用支援などが取引対象になり得ることが示されています。

数値相場だけで予算・納期を決めない

個別開発では、対象範囲、連携、移行、品質・セキュリティ要件、保守範囲、発注者側の対応によって条件が大きく変わります。公開情報だけでは同じ条件で価格や期間を比較しにくいため、数値相場ではなく、自社の前提をそろえた見積もりで確認してください。

概算相談から詳細見積もりまでの進め方

対象条件をそろえた概算相談から詳細見積もり、総コスト比較へ進む5段階の図。
対象条件をそろえた概算相談から詳細見積もり、総コスト比較へ進む5段階の図。

見積もりは総額だけでなく、対象内外、発注者側の作業、追加費用の条件、継続費用を同じ前提で確認します。

費用・期間を確認する5段階

  1. Step01

    対象をそろえる

    対象業務、必須機能、連携・移行、利用規模、非機能要件、希望時期を相談用メモにまとめる。

  2. Step02

    同一条件で概算相談する

    方式候補、概算に含むもの・含まないもの、前提条件、主な変動要因を同じ条件で確認する。

  3. Step03

    初回リリースの必須範囲を決める

    最初に必要な機能と、段階導入または後続改修へ回せる機能を分ける。

  4. Step04

    要件具体化後に詳細見積もりを確認する

    工程別の対象内外、受け入れ条件、移行、保守、追加費用となる条件を確認する。

  5. Step05

    総コストと発注者負荷で比較する

    初期費用に加え、利用料、保守、監視、改修、教育、データ準備やレビューなど発注者側の負荷も確認する。

見積書を比較するときは、次の4点を独立して確認します。

  • 含むもの:要件定義、設計、実装、テスト、移行、教育、導入支援など
  • 含まないもの:インフラ、外部サービス、保守、データ整備など
  • 発注者が担う作業:資料提供、データ準備、レビュー、受け入れテスト、教育など
  • 追加費用となる条件:要件変更、連携追加、移行量増加、テスト追加、期限変更など

対象内外・発注者作業・追加費用条件・継続費用が異なる提案を、総額だけで比較しないことが重要です。前提が異なる場合は、共通条件での再提示または差分の説明を求めましょう。

06Section失敗を防ぐには、要件・変更・受け入れ・委託条件を早めに確認する

手戻りや運用開始後の混乱は、技術だけで起こるわけではありません。要件が曖昧なまま進む、判断者が不在になる、変更の影響を確認しない、受け入れ条件が不足する、といった発注側の準備不足も影響します。

相談前からリリース前までの確認項目

  • ✓

    目的、対象業務、優先順位、成果指標、例外処理を関係者で確認した

  • ✓

    決裁者、変更判断者、レビュー担当、受け入れテスト担当を決めた

  • ✓

    変更時に、範囲・費用・納期・品質への影響を記録して判断する方法を決めた

  • ✓

    受け入れテストを、通常操作だけでなく業務シナリオと例外ケースで準備した

  • ✓

    保守範囲、障害時の連絡、教育・周知、運用開始後の改善判断を確認した

個人情報・契約・セキュリティは専門担当と確認する

個人情報、業界規制、契約、知的財産、再委託、情報セキュリティは、案件ごとに適用条件とリスクが異なります。法務・購買・情報システム・情報セキュリティなどの専門担当に確認してください。個人データの取扱いを委託する場合は、委託先の選定、必要な監督、再委託先を含む取扱状況の把握が確認観点になります。詳しくは個人情報保護委員会のガイドラインを確認してください。

外部委託では、委託範囲、責任分界、求めるセキュリティ対策、契約条件を明確にすることも重要です。

07Section検討段階に応じて、次の行動を選ぶ

すべてを一度に決める必要はありません。不足している情報に応じて、次の行動を選びます。

課題がまだ曖昧な場合

現場へヒアリングし、「誰が、どの業務で、何に困り、何が改善すればよいか」を整理します。システム開発で解決できる課題で課題起点の選択肢を確認しましょう。

方式候補を絞れない場合

用途・利用者、利用チャネル、実現方式の3軸で整理し、実現方式の比較表を確認します。連携、運用、セキュリティの未確認事項を洗い出し、システム開発の種類で比較を深めます。

発注後の進行に不安がある場合

社内の確認・受け入れ担当と、レビュー時期、変更判断の方法を仮決めします。システム開発の流れで工程の詳細を把握しましょう。

相談に進める場合

相談用1枚メモと共通依頼条件をそろえ、未確定事項には決定予定を添えて相談します。

システム開発の初期検討でよくある質問

仕様書が完成していなくても相談できますか?+

相談できます。初回相談では、達成したい目的、対象業務、主要な要件、制約、優先順位、判断体制を共有します。画面や処理の詳細な仕様は、相談や要件定義を通じて具体化します。

予算が未確定でも概算相談はできますか?+

可能です。投資判断の時期、予算上限の有無、期限・機能・総額の優先順位、段階導入の可否を伝えます。そのうえで、概算に含む範囲と対象外、費用が変わる条件を確認します。

Webサイト制作とシステム開発はどのように切り分けますか?+

情報提供や集客が主目的ならWebサイト制作が中心です。利用者別の処理、データ管理、申請・承認、予約・決済、外部連携が中心ならシステム開発を検討します。両方を含む案件もあります。

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Partner HiveWebアプリ・SaaS開発4593社掲載
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PartnerBase Mag 編集部

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デジタル発注の比較・発注準備を専門に扱う編集チーム。

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デジタル発注の比較・発注準備を専門に、依頼範囲、費用、選定基準を実務で使える粒度に整理しています。

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