SAP 2027年問題とは?ECCサポート終了までに検討すべき選択肢

SAP 2027年問題を解説。ECC 6.0の保守条件の確認方法、継続利用時のリスク、S/4HANA移行を含む4つの対応策、逆算計画、5年TCOの比較方法を整理します。

執筆 PartnerBase Mag 編集部約12分

SAP ECC 6.0を利用している企業にとって、2027年末は「システムをすぐ止める日」ではなく、保守条件と後継方針を具体化する期限として捉える必要があります。もっとも、ECC利用企業に同じ保守条件が適用されるわけではなく、製品、EHP、利用コンポーネント、契約内容によって確認すべき事項が異なります。

この記事では、SAPの保守方針を自社契約と照合する方法、ECCを継続する場合のリスク、4つの対応策、期限からの逆算、5年TCOの比較方法を整理します。自社に適用される保守条件を確認し、4つの対応策を期限・リスク・5年TCOで比較できるようになります。

SAP 2027年問題への対応を、保守条件確認、継続リスク評価、4つの対応策比較、逆算計画と5年TCO評価の順に示した判断フロー図。
SAP 2027年問題への対応を、保守条件確認、継続リスク評価、4つの対応策比較、逆算計画と5年TCO評価の順に示した判断フロー図。

保守期限だけで結論を出さず、自社の契約条件と継続リスクを確認したうえで、対応策を同じ判断基準で比較します。

01SectionSAP 2027年問題とは:まず自社に適用される保守条件を確認する

SAP 2027年問題とは、SAP ECCを含むSAP Business Suite 7の保守方針を起点に、後継システムへの移行や継続利用の方針を期限から逆算して決める課題です。重要なのは「ECCなら一律に2027年末まで使える」と判断しないことです。

SAP ECCとは(SAP ERP 6.0・EHPとの関係)

SAP ECC(ERP Central Component)は、SAP Business Suite 7の中核をなすERP製品を指す呼び名で、現行の主な対象リリースはSAP ERP 6.0です。実務では「SAP ECC 6.0」と「SAP ERP 6.0」が、ほぼ同じ環境を指して使われます。

SAP ERP 6.0には、機能拡張を段階的に提供するEHP(Enhancement Package)があり、保守の対象・条件はどのEHPを適用しているかによって変わります。自社の環境がどのリリース・EHPに該当するかは保守条件確認の出発点になるため、システム台帳とBasis担当の情報で最初に特定してください。

2025年問題から2027年問題へ変わった経緯

確認基準日を2026年8月8日とすると、SAPのBusiness Suite 7保守方針では、コアアプリケーションの主流保守を2027年12月31日までと案内しています。SAP ERP 6.0を含む製品群については、最新3つのEHPが対象として示されています。

「SAP 2025年問題」と呼ばれることがあった背景には、主流保守の期限が2025年末とされていた経緯があります。SAPは2020年2月の公式発表で、主流保守を2027年末まで延長する方針を公表しました。現行の期限や保守条件を確認する際は、過去の発表ではなく、保守方針ページと自社契約を基準にしてください。

主流保守・SAP提供延長保守・顧客別保守を区別する

同じ公式方針では、任意のSAP提供延長保守が2028年1月1日から2030年12月31日まで案内されています。ただし、これはSAP提供の任意サービスであり、対象製品・EHP・コンポーネント、契約期間、支援範囲が自社でも同じであるとは限りません。

また、SAPの案内では、延長保守を選ばない場合または延長保守終了後の選択肢として顧客別保守が示されています。主流保守、SAP提供延長保守、顧客別保守は同じ支援範囲とみなさず、実際に受けられる修正、制度対応、問い合わせ、SLAを契約条件で確認する必要があります。

保守期限を一律に判断しない

主流保守の終了は、ECCが2027年12月31日に自動停止することを意味しません。一方で、延長保守がすべてのECC環境に同じ条件で適用されるわけでもありません。対象製品、EHP、利用コンポーネント、契約中の保守サービス、支援範囲を確認してから、継続利用または移行の計画を置くことが必要です。

SAP提供延長保守で契約確認する論点

対象製品・EHP・コンポーネント

SAP ERP 6.0のリリース、EHP、利用中のコンポーネントが対象となるかを確認します。

契約期間・申込条件

利用可能な開始・終了時期、申込条件、更新条件を契約書とSAP窓口で照合します。

追加費用の算定対象

SAP公式方針で示される保守基準額に対する2パーセントポイントのプレミアムについて、算定対象や契約上の扱いを確認します。

支援範囲

修正、法制度対応、問い合わせ、SLA、例外対応をSAP Note、契約条項、SAP窓口で確認します。

2030年以降の後継策

延長保守を継続の最終方針にせず、2030年以降の保守区分と後継システムの完了条件をロードマップに置きます。

自社で確認する製品・EHP・契約条件

対象可否を確認する際は、SAP Note、Product Availability Matrix、契約書、SAP窓口を照合先にします。SAP NoteやProduct Availability Matrixはログインが必要な場合があるため、Basis担当、購買、契約管理担当を早い段階で巻き込むと確認が進みます。

保守条件を確認する初動チェックリスト

  • ✓

    ECCの製品名、リリース、EHP、利用中モジュール・コンポーネントを一覧化する。

    システム台帳とBasis担当の情報を突き合わせる。

  • ✓

    契約中の保守サービス名、契約満了日、更新条項を確認する。

    契約書、購買記録、SAP担当者の回答を根拠として残す。

  • ✓

    延長保守の対象可否、費用、支援範囲、申込条件の確認責任者を決める。

    確認日、担当者、根拠文書の版数も記録する。

先に理解したい用語

EHP

Enhancement Packageの略称です。SAP ERP 6.0における機能拡張・更新の区分で、保守対象の確認で重要になります。

アドオン

標準機能で対応できない業務のために追加開発した機能です。

二層ERP

全社共通の基幹システムと、拠点・事業向けシステムを役割分担させる考え方です。

TCO

Total Cost of Ownershipの略称です。導入費だけでなく、運用、保守、社内工数、リスク対策まで含めた総保有コストを指します。

RFI・RFP

RFIは情報提供依頼、RFPは提案依頼です。候補の対応可能範囲を確認した後、対象範囲と評価条件をそろえて提案・見積もりを比較します。

02Section主流保守終了後もECCを継続する場合、何をリスクとして評価するか

主流保守が終了しても、ECCが直ちに利用不能になるとは限りません。しかし、「稼働している」と「事業継続上のリスクを管理できている」は別の状態です。延長保守を含めて継続利用を検討する場合は、保守区分と自社の業務・技術・統制条件を分けて評価します。

「利用できる」と「リスクを管理できる」は別である

主流保守後にどの支援を受けられるかは、契約内容と対象環境によって異なります。特に、製品起因の不具合、脆弱性、制度変更、問い合わせ、SLAについて、主流保守と同じ条件を前提に計画を立てることは避けるべきです。

サポート終了(EOL)を迎えたソフトウェアを使い続けると、新たに発見された脆弱性への修正提供が期待できず、攻撃や業務停止につながるリスクが高まることは、IPAのサポート終了に伴う注意喚起でも示されています。個別製品に関する注意喚起ではありますが、ECCや周辺基盤を含め、保守状態を前提に資産管理と対策責任を整理する実務観点として役立ちます。

6つのリスク観点を棚卸しする

セキュリティでは、ECCだけでなくOS、データベース、ミドルウェア、認証基盤まで含めて、修正提供の有無、脆弱性把握、権限管理、ネットワーク分離の必要性を確認します。

障害対応では、製品起因の障害が起きた場合の問い合わせ先、復旧手順、エスカレーション、SLA、BCPを確認します。特定担当者にしか復旧手順が分からない状態は、保守区分にかかわらず事業継続上のリスクです。

制度対応では、税務、会計、貿易、電子帳簿など、自社の業務に関係する制度変更に対し、誰が影響確認と改修を担うかを決めます。複数国で利用する場合は、国ごとの制度対応時期も確認対象になります。

周辺基盤では、OS、DB、Java、ブラウザ、EDI、監視ツールなどの保守期限がECCより先に到来しないかを確認します。ECCの保守条件だけを確認しても、周辺要素の更新制約が業務継続に影響することがあります。

監査・統制では、継続利用のリスクを誰が受容し、どの代替統制を置き、どの証跡を残すかを整理します。監査、取引先、内部統制上の要求と矛盾しないかを確認します。

運用コストでは、属人化、独自改修、障害対応、外部委託、周辺基盤の延命対策を可視化します。短期的には移行を見送る案でも、運用負荷やリスク対策費が積み上がる場合があります。

延長保守の詳細範囲は契約で確認する

SAP提供延長保守は、継続案を検討するための選択肢の一つです。ただし、利用可否、対象コンポーネント、修正・制度対応・問い合わせの範囲、SLA、個別の請求条件は公開情報だけで確定できません。

そのため、延長保守を選択肢に残すなら、SAP Note、Product Availability Matrix、契約書、SAP窓口への確認を、移行計画と並行して進めます。後継策の責任者、本稼働目標、未達時の対応も同時に決め、延長利用だけが目的にならないようにします。

03Section2027年末に向けた4つの対応策を同じ基準で比較する

対応策は、特定の製品や移行方式を先に決めるのではなく、期限、継続リスク、事業計画、現行資産、体制を踏まえて比較します。詳細検討へ進める候補は、まず2〜3案に絞るのが現実的です。

選択肢は4案に限定して比較する

S/4HANA移行、他ERP刷新、延長保守を伴うECC継続、段階的刷新・二層ERPの4案を、検討の焦点と留意点で比較した図。
S/4HANA移行、他ERP刷新、延長保守を伴うECC継続、段階的刷新・二層ERPの4案を、検討の焦点と留意点で比較した図。

4案は、期限を満たせるか、受容できない事業継続リスクを残さないかを先に確認し、同じ条件で比較します。

後継策の期限と継続リスクをセットで評価します。

  • S/4HANA移行:中長期もSAPを基幹として活用する方針なら有力な候補です。SAPはS/4HANA Cloud Private Editionへの経路として、新規導入、システムコンバージョン、選択的データ移行を案内しています。移行方式の詳細はS/4HANA移行の進め方で確認できます。
  • 他ERPへの刷新:業務、組織、データ、運用モデルを大きく見直す必要がある場合の候補です。製品比較に先立ち、業務要件、統制要件、移行対象を定義します。
  • SAP提供延長保守を伴うECC継続:期限内の後継システム本稼働が難しく、準備期間が必要な場合の候補です。延長保守の対象・契約・支援範囲と、延長期間内の後継策をセットで評価します。
  • 段階的刷新・二層ERP:拠点や事業単位の差が大きく、一括切替のリスクを抑えたい場合の候補です。共通マスタ、連結、連携、二重運用を含む全体アーキテクチャが必要になります。

S/4HANAへの移行経路や、組織・マスタ構造、データ品質、履歴データ、カスタムコードが方式選定に関わる点は、SAPの移行経路とSAPの選択的データ移行に関する案内でも確認できます。

なお、SAPは2025年2月に「SAP ERP, private edition, transition option」を発表しています(SAP公式発表)。RISE with SAP(SAP ERP, private edition)の契約と2030年末までのSAP HANAデータベースへの移行などを条件に、2031年から2033年末までECC相当の環境への保守を提供する期間限定のサブスクリプションで、2028年から購入可能と案内されています。ただし、大規模・複雑なシステム環境を持つ顧客を主な対象とした限定的な提供であり、対象範囲・申込条件・料金は個別契約によって異なります。すべてのECC利用企業が利用できる前提で計画へ織り込まず、適用可否はSAP窓口と契約条件で確認してください(2026年8月時点の公開情報)。

最初に期限充足性と事業継続リスクを判定する

採点を始める前に、各案が期限を満たせるか、受容できない事業継続リスクを残さないかを判定します。この2条件を満たさない案は、TCOや将来性の評価が高くても、そのまま候補には残しません。

評価軸確認する根拠最低基準・除外条件主な承認責任者
2027年末までの実行可能性ゲート表、要員計画、繁忙期カレンダー、調達計画本稼働または安全な段階展開への道筋を示せない案は除外PJ責任者・経営スポンサー
事業継続リスク保守条件、リスク評価、BCP、監査要件受容できない未対策リスクが残る案は除外IT・監査・業務責任者
初期投資・5年TCOTCOテンプレート、見積前提、除外項目社内工数や除外項目が不明な見積もりは採点保留経理・経営スポンサー
業務変更負荷業務一覧、標準化方針、受入計画重要業務の責任者が不在の案は採点保留業務領域責任者
アドオン・連携改修負荷資産台帳、帳票一覧、インターフェース一覧重要連携・法定帳票の対応方針がない案は除外候補IT・業務責任者
必要体制・要員確保RACI、要員計画、テスト計画主要責任者・テスト要員の確保見込みがない案は再計画PJ責任者
将来適合性事業計画、IT方針、組織再編計画事業計画と重大な矛盾がある案は除外候補経営・業務・IT

残った案に対して、経営・業務・ITで評価軸の重みと根拠を合意します。総合点は、たとえば「各軸の点数÷5×重み」を合算する形で算出できますが、点数そのものより前提条件と根拠資料を残すことが重要です。上位2〜3案を同じ対象範囲・同じ質問票でRFI・RFPに進め、費用、体制、責任分界、実行可能性を比較します。

04Section2027年末本稼働から逆算する:意思決定ゲートと再計画条件

2026年8月の初動から2027年末の本稼働、2028年1月の安定化までを、意思決定ゲートと未達時の再評価分岐で示すタイムライン。
2026年8月の初動から2027年末の本稼働、2028年1月の安定化までを、意思決定ゲートと未達時の再評価分岐で示すタイムライン。

逆算計画では、各ゲートの承認事項に加え、未達時に対象範囲の縮小や段階展開を判断する分岐もあらかじめ置きます。

2026年8月8日から2027年12月31日までは約17か月です。この期間で検討・選定・実装・テスト・切替を進める場合、本稼働日と安定化完了日を分け、構想段階から未達時の分岐を合意しておく必要があります。

2027年末本稼働の逆算例は限定条件の計画である

以下は、対象範囲が限定され、早期の意思決定と主要要員の確保ができる場合の例示です。複数法人・海外拠点・全社業務刷新・大量のアドオンや重要連携を伴う案件で、全社一括刷新の実現性を保証するものではありません。繁忙期、決算、調達手続き、データ品質に応じて、前倒し、対象範囲縮小、先行・後続範囲の分離、段階展開を判断してください。

ゲート推奨完了時期必須成果物・承認事項未達時に再評価する分岐
初動・事実確認2026年8月8日〜9月30日EHP、保守契約、延長保守可否、対象範囲、責任者延長保守の適用可否と契約確認を優先し、完全移行前提の調達を保留
構想承認2026年10月31日まで候補2〜3案、対象業務・法人、5年TCO、主要リスク、本稼働日の仮置き対象範囲縮小、後続範囲の分離、延長保守の利用を再評価
選定完了・契約着手2026年12月31日までRFI・RFP比較、体制、責任分界、移行方式、詳細計画一括導入から段階展開へ切り替えられるかを再評価
設計凍結2027年5月31日まで要件承認、重要アドオン・連携方針、移行データ基準、テスト計画未確定・低優先度要件を後続フェーズへ切り出せるかを判断
テスト完了2027年9月30日まで主要業務、連携、性能、権限、移行リハーサルの合格本稼働延期、対象範囲縮小、段階展開、延長保守を再評価
切替判定2027年11月30日までGo/No-Go基準、BCP、教育、障害対応、責任者承認年末切替の回避、先行範囲のみ稼働、ECC継続条件を経営判断
本稼働2027年12月1日〜31日本番移行、日次の業務継続確認、重大障害の対応体制条件未達なら切替を実施せず、代替運用と利用可能な保守措置を判断
安定化完了2028年1月31日までを目安重大障害収束、主要業務KPI、残課題計画、運用移管安定化支援の延長と後続展開の開始条件を再承認

本稼働を終えたことだけで、移行が完了したとはいえません。主要業務が継続し、重大障害が収束し、運用責任が移管されて初めて安定化完了を判断します。年末が繁忙期や決算と重なる場合は、切替日を前倒しするか、先行範囲を限定する選択も必要です。

要件定義では、IT部門だけで判断を完結させず、業務部門がビジネス要求の定義に参加します。IPAの要件定義ガイドが示すように、ビジネス要求、システム化要求、要件定義の管理を分け、承認者を明確にすると、後工程での判断遅延を抑えやすくなります。

直近90日で進める初動

  1. Step01

    最初の30日で保守条件と調査範囲を確定する

    ECCの製品・EHP・保守契約・延長保守の確認責任者を置きます。業務、アドオン、連携、データ、周辺基盤、障害履歴の調査対象も決め、確認結果の証跡を残します。

  2. Step02

    次の30日で候補案とリスクを比較する

    4案を除外条件から評価し、詳細検討に進める2〜3案を選びます。本稼働日、繁忙期回避、安定化完了日、未達時の分岐も仮置きします。

  3. Step03

    90日以内に構想承認の判断材料をそろえる

    5年TCO、対象範囲、主要リスク、体制、RFI・RFPの比較条件をまとめます。延長保守を候補に残す場合は、対象、費用、支援範囲、申込条件をSAP窓口で確認します。

05Section費用は単価ではなく5年TCOで比較する

移行・刷新・ECC継続の費用は、単一の金額や初期導入費だけでは比較できません。対象業務、法人・拠点数、アドオン・連携、データ品質、支援範囲、契約条件が異なるため、公開情報だけでは同じ条件での価格比較が難しいためです。金額レンジを置くよりも、比較期間と費目をそろえた5年TCOで予算仮説を作る方が、稟議と見積比較に使いやすくなります。

5年TCOの比較式を先に決める

初期費用、継続費用、社内工数、リスク対策、切替・二重運用費から廃止できる既存費用を差し引いて5年TCOを比較する構造図。
初期費用、継続費用、社内工数、リスク対策、切替・二重運用費から廃止できる既存費用を差し引いて5年TCOを比較する構造図。

5年TCOは費目だけでなく、対象範囲、責任分界、除外項目をそろえて初めて比較材料として使えます。

5年TCO = 初期費用 + 5年間の継続費用 + 社内工数の人件費換算 + リスク対策費 + 切替・二重運用費 - 廃止できる既存費用

SAP提供延長保守について、SAPのBusiness Suite 7保守方針では、保守基準額に対する2パーセントポイントのプレミアムが示されています。この条件は、SAP提供延長保守を伴うECC継続案の保守費要素として扱います。S/4HANA移行や他ERP刷新の導入総額、あるいは5年TCO全体の金額根拠として扱うものではありません。

項目案A案B案C比較条件
初期費用構想、要件、設計、開発、移行、テスト、教育、切替を含むか
継続費用(年額×5)ライセンス、保守、基盤、運用委託、契約期間を統一
社内工数役割別時間×社内単価、代替要員費、繁忙期対応を含める
延長利用・リスク対策費延長保守、周辺基盤、セキュリティ、制度対応、独自対策
二重運用・切替費並行稼働、データ照合、切替支援、切戻し準備を含める
廃止・削減費用廃止可能な既存保守、インフラ、周辺ツールを控除条件付きで計上
5年TCO算定期間、為替・物価前提、除外項目を統一

見積条件をそろえない限り金額は比較できない

同じ「移行」でも、データ移行の対象年数、アドオンの改修範囲、連携の件数、教育対象、安定化支援の期間が異なれば、見積金額を横並びにできません。各候補に対して、対象法人・業務・モジュール、移行対象データ、アドオン・連携、テスト・教育・安定化の責任分界、除外項目を同じ条件で提示します。

5年TCOで見落としやすい費目

社内工数

業務部門、IT、データ、テスト、教育、監査の投入時間を人件費換算し、通常業務の代替要員費も確認します。

延長利用中の対策費

SAP提供延長保守だけでなく、周辺基盤の延命、脆弱性対策、制度対応、監査対応を分けて計上します。

二重運用・切替費

並行稼働、データ照合、切替支援、切戻し準備は、初期構築費とは別の費目として扱います。

廃止できる既存費用

既存保守、インフラ、周辺ツールを廃止できる時期と条件を明記し、見込み削減を過大に控除しないようにします。

06Section現状調査・推進体制・比較条件を整えて構想承認へ進む

候補比較や見積依頼を急ぐほど、現状情報の不足が後からスコープ増加や比較不能な見積もりにつながります。保守条件の確認と並行し、業務・技術・運用資産を可視化して、誰が何を決めるかを明確にします。

現状調査で最低限そろえる情報

比較開始前の現状調査チェックリスト

  • ✓

    利用業務、法人、拠点、主要利用者を一覧化する。

  • ✓

    アドオン、カスタムコード、帳票を利用頻度・業務重要度・代替可否で分類する。

  • ✓

    EDI、周辺業務システム、BI、認証、データ連携を可視化する。

  • ✓

    マスタ・取引データの量、品質、保存年限、アーカイブ要件を確認する。

  • ✓

    OS、DB、ミドルウェア、インフラの保守期限と、障害履歴・復旧手順・外部委託範囲を確認する。

部門横断の役割と承認会議を置く

経営スポンサーは投資、優先順位、期限変更、リスク受容を判断します。PJ責任者はスコープ、課題、意思決定を管理し、業務領域責任者は業務要件、標準化の可否、受入テスト、教育を担います。

IT・Basis・連携担当は、技術構成、連携、データ移行、セキュリティ、運用移管を担当します。データ責任者はマスタと移行品質を管理し、セキュリティ・監査は権限、ログ、BCP、例外管理を確認します。テスト責任者は、主要業務シナリオ、欠陥、切替可否の判定基準を明確にします。

可用性、データ保護、運用体制などの要求は、システムの重要度とリスクに応じて優先付けます。IPAの要求策定ガイドを参考に、すべての要求を同じ優先度で扱わず、事業継続に直結する条件を先に固定します。

RFI・RFPで固定する比較条件

RFIでは、候補が対応できる業務範囲、移行経路、段階展開の考え方、体制、品質管理の方法を確認します。RFPでは、対象法人・拠点・業務・利用者数、移行対象データ、アドオン・帳票・連携の扱い、テスト・教育・安定化の責任分界を固定します。

さらに、初期費用、継続費用、社内工数、除外項目を含む5年TCOを同じ条件で提示させます。遅延、データ不備、連携障害が発生した場合の顧客側・提供側の責任分界とエスカレーションも確認します。比較対象ごとに範囲や前提が異なる提案は、金額だけで採点せず、条件をそろえてから評価します。

SAP 2027年問題でよくある確認事項

ECCは2027年末に必ず停止しますか?+

主流保守の終了は、ECCが直ちに停止することを意味しません。ただし、主流保守、SAP提供延長保守、顧客別保守では支援条件が同じとは限りません。SAP保守方針、契約書、SAP窓口を照合し、自社環境で受けられる支援範囲を確認してください。

延長保守を選べば2030年まで通常保守と同じ条件ですか?+

SAP提供延長保守は任意のサービスです。対象製品・EHP・コンポーネント、修正・制度対応、問い合わせ、SLA、申込条件、個別料金は自社契約での照合が必要です。期間と方針はSAPのBusiness Suite 7保守方針で確認できますが、個社の適用条件はSAP Note、Product Availability Matrix、契約書、SAP窓口で確認します。

2027年までにS/4HANAへ移行しなければなりませんか?+

S/4HANA移行は有力な候補ですが、他ERP刷新、SAP提供延長保守を伴うECC継続、段階的刷新・二層ERPも比較対象になります。期限充足性と事業継続リスクを先に判定し、TCO、業務変更、連携、体制、将来適合性で候補を絞ります。移行実務はS/4HANA移行の進め方を参照してください。

費用相場がない段階で、予算化はどう始めればよいですか?+

単一の費用相場ではなく、5年TCOの費目と対象範囲を固定し、同条件の見積もりを取得して予算仮説を作ります。SAP提供延長保守の2パーセントポイントは保守基準額に対する条件であり、移行・刷新の総額を示すものではありません。

SAP 2027年問題への対応は、移行を急ぐか、継続利用するかの二択ではありません。まず自社の製品・EHP・保守契約を照合し、ECC継続のリスクを評価します。そのうえで、4つの対応策から期限と事業継続の条件を満たす候補を2〜3案に絞り、逆算ゲートと5年TCOの条件をそろえて構想承認とRFI・RFPの準備へ進めてください。

SAP導入・S/4HANA移行の支援会社を比較する

保守条件の確認、移行方式の検討、現状調査、RFI・RFPの準備を進める際は、対応範囲や体制、移行実績、責任分界をそろえて支援会社を比較します。

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